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「亜鉛はAGAに効果があるのか?」

2018.02.11

薄毛に効果があるとして亜鉛は、よく耳にする栄養素です。しかし、亜鉛がAGAにどのように作用するのか、DHTを抑制するのか?抑制しないのか?というように情報が錯綜しているところがあります。

今回は、亜鉛と薄毛との関係性とAGAにどのような作用があるのかについて詳しくご紹介していきます。

亜鉛の体への作用

亜鉛は、人間の体内に元からある必須ミネラルですが、約2000mgとごく微量です。主に骨格筋・骨・皮膚・脳・腎臓・肝臓に存在しています。体内に千数百以上と言われる酵素のうち300種類以上の酵素に必要な栄養素でタンパク質の合成、細胞分裂、新陳代謝、免疫力向上などの作用があります。

体にとっては、身長の伸び(子供)・皮膚代謝・生殖機能・骨格の発達・味覚の維持・精神や行動への影響・免疫機能に関与しています。

亜鉛欠乏症とは

亜鉛は、体内で生成することのできない栄養素なため食事などから摂取しなくてはなりません。体内の亜鉛が不足してくると以下のような様々な症状が現れてしまいます。

・皮膚炎
亜鉛は表皮のたんぱく質合成に作用しているため亜鉛が不足すると皮膚が荒れてしまいます。水疱・乾癬などが起こりやすくなります。また、爪の形成にも影響を及ぼします。

・脱毛
毛包周辺に皮膚障害が発症した場合、刺激を受けて脱毛をする場合があります。

・貧血
赤血球の増殖が亜鉛不足により阻害されるため貧血が起こります。スポーツ競技者・透析患者の場合汗や尿からも亜鉛を排せつし、溶血することがあります。

・味覚障害
舌に存在する味蕾という味を感じる上皮細胞には亜鉛が高濃度に存在しています。亜鉛が欠乏することにより、味細胞先端にある微絨毛が減り味細胞の空胞化などが起こり味覚を感じにくくなります。

・発育障害
亜鉛は、身体を作るたんぱく質に大きく作用します。亜鉛が不足することで成長ホルモンの分泌などが減り、身長の伸びが悪くなり低身長になることがあります。

・性腺機能不全
男性の性腺発達障害・機能不全が起こります。亜鉛が不足することによってテストステロンの合成や分泌が上手く行われなくなる、また、精子形成障害を引き起こすなどの症状があります。

・食欲低下
消化管の粘膜が萎縮し、消化液の分泌が減ったり消化管運動が低下したりするため食欲が低下します。

食事をあまりとらなくなることで亜鉛の摂取量がさらに減少するため亜鉛欠乏状態が悪化するという悪循環に陥りがちです。

・下痢
食欲低下と同じ理由で消化管粘膜、中でも腸粘膜の萎縮により引き起こされます。また、亜鉛が不足することで腸粘膜の免疫機能が変化ししまうことも下痢を引き起こします。

・骨粗しょう症
亜鉛が不足した場合、骨形成の低下が認められています。

・創傷治癒遅延
タンパク質の合成がうまくいかなくなるため傷の治りが遅くなります。

・易感染性
皮膚のバリアが落ち、免疫力が落ちるため細菌やウイルスなどによる感染症にかかりやすくなってしまいます。特に小児の場合、下痢になりやすく長期入院高齢患者は感染症にかかり重症化しやすくなります。

(以上、一般社団法人 日本臨床栄養学会「亜鉛欠乏症の診療指針 2016」より)

亜鉛が薄毛や抜け毛に効果的とされる理由

よく、薄毛に悩んでいるのなら亜鉛を採ればいいという言葉を耳にします。その理由として2つご紹介しましょう。

髪の毛の90%は、「ケラチン」という成分でできています。ケラチンは、タンパク質の1つでシスチンなど18種類のアミノ酸から作られています。このアミノ酸の合成に亜鉛が必要です。亜鉛が不足するとケラチンが上手く合成できず、髪の成長に影響を及ぼすため亜鉛は薄毛に効果があると言われています。

また、先述しました亜鉛欠乏症の中にあった「脱毛」の症状によって薄毛になっている場合、亜鉛を摂取することで薄毛が改善します。亜鉛不足によって起こる脱毛は、休止期脱毛とされ円形脱毛症やびまん性脱毛症を指します。

亜鉛が男性型脱毛症(AGA)に効果がある?

薄毛の改善と健康な髪の育成に効果のある亜鉛ですが、男性の薄毛の一番の原因である男性型脱毛症(AGA)の改善には効果があるのでしょうか。

ジヒドロテストステロン(DHT)を抑制する作用がある?

亜鉛がジヒドロテストステロンを減らす作用があるという説が出たのは、イギリスの英国皮膚科学会誌(British Journal of Dermatology)による論文です。亜鉛とアゼライク酸による5αリダクターゼ活性の阻害について書かれています。

5αリダクターゼは、男性ホルモンであるテストステロンと結合することでジヒドロテストステロンに変化させる作用があり、5αリダクターゼの活性を阻害するということは、ジヒドロテストステロンの生成が抑制されるためAGAに効果があるということになります。

しかし、この実験は、培養細胞に亜鉛を加えるという方法で人の体内での阻害については行われていません。さらに、亜鉛は吸収しにくいため実際亜鉛を経口摂取した場合、皮膚細胞にたどり着くまでには論文にある濃度よりも少ない亜鉛であると考えられます。

そのため、亜鉛がジヒドロテストステロンの生成を抑制するという説を完全に信用するには、疑問が残ります。

さらにこの他にも、前立腺における5αリダクターゼに対する亜鉛の効果についての研究でも、亜鉛不足の人が亜鉛を摂取すると低濃度の亜鉛の場合5αリダクターゼの量は増加するが、高い濃度の亜鉛では5αリダクターゼの量が減少したと書かれています。

ジヒドロテストステロン(DHT)が増える?

逆に亜鉛がジヒドロテストステロンを増やす作用があるという説があるのは、どういうことなのでしょう。こちらは、アメリカで行われた2つの実験結果によるものです。

・男性不妊患者への亜鉛療法による実験
まず、男性不妊患者に亜鉛を摂取させることによって血漿テストステロン・ジヒドロテストステロン・精子数を調べたものです。

この実験で4.8ng/ml未満を摂取した男性群は、精子数と同様にテストステロンとジヒドロテストステロンが増え、複数の妻が妊娠することができました。4.8ng/ml以上摂取した男性群は、精子数とテストステロンは増えませんでしたが、ジヒドロテストステロンの増加がみられました。

・ラットを亜鉛に与えた実験
亜鉛を不足させたエサを与えたラットと亜鉛を十分に与えたラットを比較したところ、亜鉛不足のラットはテストステロン及びジヒドロテストステロンの数値が低いことがわかっています。

亜鉛はジヒドロテストステロンを抑制しない?

上記4つの実験結果を比較しても亜鉛がジヒドロテストステロンを抑制するという実験は濃度的に人間の体内ではありえないようなものであったり、高濃度の亜鉛を摂取した場合だったりと現実的ではなく、根拠として弱いことがわかります。

ジヒドロテストステロンの数値が上がった実験は、実際に男性不妊が解消するなど裏付けもされていますので『亜鉛はジヒドロテストステロンを抑制しない』可能性が高いと考えられます。

市販されている亜鉛のサプリメントなどでも筋肉増強に役立つとされており、ボディビルダーの人などが多く使用しています。筋肉増強には、男性ホルモンであるテストステロンの増加が必要ですし、テストステロンが増えればジヒドロテストステロンも増えやすくなると考えることができます。

AGA対策に亜鉛は必要ない?

AGAの原因となるテストステロンやジヒドロテストステロンを抑制せず、むしろ増えてしまうのなら、AGA治療のためには亜鉛を摂取しない方がいいのでは・・・と考える人も少なくないでしょう。

しかし、それは間違いです。亜鉛は、必須ミネラルの一つであり、先述しておりますが亜鉛不足になることで薄毛にもなりますし、何より健康に大きな弊害が出てしまいます。

現代人は、亜鉛が不足しがちですので1日の推奨摂取量・必要摂取量に補う程度の亜鉛を摂取することを目的として亜鉛を摂取することをオススメします。

亜鉛の推奨摂取量は?

厚生労働省の『日本人の食事摂取基準2015年版』によると1日に摂取する亜鉛の推奨量は、男性で10mg、女性で8mgとされています。

では、普段どれくらいの亜鉛を摂取できているのでしょうか。

厚生労働省の『平成28年国民健康・栄養調査報告』によると1日に成人男性は8.8mg、成人女性は7.3mg摂取しています。

男性で1.2mg、女性で0.7mg不足していることになります。

亜鉛を過剰摂取した場合

吸収率の悪い亜鉛ですが、あまり大量に摂取すると身体に逆に害になってしまいます。成人男性の摂取上限は1日に40~45mg、成人女性の場合は35mgとされています。

亜鉛の推奨摂取量を超えて長期間取りすぎてしまった場合、急性亜鉛中毒になってしまう場合があります。吐き気・嘔吐・腹痛・低血圧・下痢・黄疸・胃腸障害・腎機能障害などの症状が出てしまいますので気を付けましょう。

また、亜鉛・銅・鉄は、同じ経路で体に吸収されていきます。そのため亜鉛をたくさん摂取すると身体が今度は銅や鉄を吸収できなくなってしまい、銅欠乏症や鉄欠乏症になり貧血や免疫障害・性機能の低下・味覚や嗅覚の低下・善玉コレステロール数値の低下・抗酸化機能の低下などが起こってしまいます。

通常の食品で過剰摂取になってしまう可能性は低いですが、サプリメントなどを摂取している人が牡蠣をたくさん食べるなどリスクが全くないわけではありませんのでくれぐれも適量を守って摂取するように気を付けましょう。

亜鉛不足を補うためには

亜鉛を補える食べ物

亜鉛を豊富に含んでいる食材と言えば、牡蠣がすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。牡蠣は食品の中でも最も亜鉛を多く含んでおり、その他に肉や魚介類などの動物性食品や豆類などにも含まれています。

牡蠣は100gあたり13.2mgもの亜鉛を含んでおり、5個で1日の推奨摂取量を補うことができます。5個以上食べてはよくないというわけではありませんが、牡蠣が好きだからとたくさん食べてしまうと具合が悪くなる人がいるのは、亜鉛の摂取量が多くなってしまったことによる急性中毒の可能性が高いでしょう。

亜鉛を補うためのサプリメント

サプリメントで亜鉛を補うのは、賢い方法です。毎日の食事の中で亜鉛の必要摂取量を摂るのには、限界があります。

ただし、サプリメントを選ぶには、亜鉛含有量だけを見て選んではいけません。多くの手ごろな亜鉛サプリメントに含まれているのは、『亜鉛酵母』です。『亜鉛酵母』という熱処理がされていない亜鉛が含まれていた場合、摂取してもそのまま対外に排出されてしまいます。

サプリメントを選ぶときには、「亜鉛含有酵母」「亜鉛酵母粉末」などの記載がないものを選びましょう。

亜鉛の吸収をよくするものと吸収を阻害するもの

亜鉛は体内への吸収率が悪く、約30%程度と言われています。そのため亜鉛の吸収をよくする栄養素を一緒に取り入れることをオススメします。吸収をよくするものとして動物性たんぱく質・ビタミンC・クエン酸・リンゴ酸・乳糖などがあります。

逆に、亜鉛の吸収を阻害するものにも注意しておきましょう。食物繊維・シュウ酸・キトサン・フィチン酸・ポリリン酸・タンニン・カルシウムなどです。

シュウ酸はホウレンソウや紅茶に、フィチン酸は玄米や豆類に、ポリリン酸はインスタント食品などのジャンクフードに含まれています。

タンニンが含まれる代表的なものにコーヒーがありますが、亜鉛の吸収を50%低下させてしまうためコーヒーをどうしても飲みたい場合は、飲む1時間前か飲んだ2時間後に亜鉛を摂取するといいでしょう。

また、アルコールの摂取も摂りすぎると吸収を阻害しますので適量までにとどめましょう。

亜鉛を無駄に消費してしまう習慣

亜鉛は、日々の生活の中で消費されてしまいやすい栄養素です。アルコールを飲みすぎる・タバコを吸う・ストレスや疲労を溜め込むとアルコールや活性酸素などを分解するため亜鉛が消費されます。

また、肉体労働者やスポーツ選手など汗をたくさんかく人や射精行為などでも体内の亜鉛が外に排出されてしまいます。せっかく摂取した亜鉛が無駄に消費されないようにできることから気を付けてみましょう。

まとめ

亜鉛の育毛効果と男性型脱毛症への効果についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。髪の健康にいいとされている亜鉛ですが、発毛や育毛ができる栄養素というわけではありませんでした。

しかし、髪や体の健康を維持するためにはなくてはならないものです。普段から少し意識をして不足分が摂取できるように気を付けてみましょう。摂りすぎると体に害がありますので1日の摂取量はしっかり守って、太くて健康な髪の毛を育てていきましょう。